カナダのペット飼育はもはや文化。ペットを家族の一員として「升級」させるトレンド
カナダでのペット事情は、この数年で大きく変わりつつある。2025年時点でカナダのペット数は2,850万頭を超えると予想されており、カナダの約80パーセント近いはほぼ4世帯に3世帯がペットを飼っている計算だ。これはもはや単なる「ペットの流行」ではなく、社会的な文化現象といえる。
注目すべきはペット飼育の理由が多様化していることだ。従来は高齢者の孤立防止や家族の娯楽という側面が強かったが、最近はミレニアル世代が子どもを持つ代わりにペットを選択する傾向が明らかになっている。同時にシニア世代も、心の支えを求めてペットとの生活を重視する人が増えている。これらの変化は、単なる動物との同居ではなく、「ペットを家族の一員として扱う」という深い感情的結合を生み出している。
このトレンドは消費行動にも鮮明に反映されている。カナダのペット食品小売販売は2024年に66億7,000万カナダドル(約480億円相当)に達し、2019年から2024年にかけて年平均成長率10パーセントを記録した。飼い主たちは単に食事を与えるだけでなく、ペット用サプリメントやプレミアム製品、さらには行動の問題改善や精神的なケアまで求め始めている。
経済的な逆風も、この傾向を弱めてはいない。カナダでは現在、生活コストの上昇やインフレ圧力により、多くの消費者が価値志向に傾いている。しかし興味深いことに、ペット関連の支出においては「安さ重視」と「質と健康重視」が共存している。飼い主たちは価格と品質のバランスを取りながらも、ペットの福祉を最優先にする傾向が強い。
もう一つの重要なトレンドは、ペットのライフスタイルへの統合だ。カナダの消費者の間では、犬を飲食店やバーなどの公共の場に連れていくことを認める施設を増やしてほしいという声が高まっている。特に中国系や南アジア系の飼い主の中でこうした要望が強い。これはペットとの時間を生活の核として捉える価値観の表れであり、都市部での新しい生活様式の構築を示唆している。
ペット関連産業全体でも、このような飼い主の価値観の変化に応えるべく、サービス提供者が動き始めている。小売業者やベテリナリアンは、パーソナライズされたサービスやデジタル化への対応を急速に進めており、若い世代の飼い主をターゲットにした新しいビジネスモデルが次々と登場している。同時に、カナダで製造されたペット関連製品への信頼と需要も上昇しており、地元産業の成長を後押ししている。
カナダのこのペットに対する姿勢の変化は、単に市場規模の拡大では捉えられない。それは、家族観の多様化、都市生活の孤独感への対抗、そして人間とペットの関係をより深く、より平等なものへと変えていく社会全体の動きなのだ。