インドのペット産業が急速な転換期を迎えている。かつてペットは番犬や家畜という位置づけが強かったが、都市部の中流階級やミレニアル世代の間では、ペットが家族の一員、あるいは子どもとして扱われるようになってきた。この「ペット人間化」の流れが、ペット関連産業全体を大きく変えようとしている。 インドでペット所有の急増は統計にも明確に表れている。ジェネレーションZを中心に2024年のペット所有者の70%が初めてペットを飼う人たちであり、複数匹を飼う家庭も急速に増えている。犬がペットの74%以上を占めており、2026年までにペット犬は4300万匹に達すると予測されている。インドの総ペット人口は2024年に約5%増加して約3900万匹に達し、引き続き成長を続けるとみられている。 ペットが「家族」という認識が広がるにつれて、消費者の購買行動も大きく変わった。都市部の飼い主たちは、従来の家庭での手作り食からパッケージ化されたペットフードへの需要を高めている。特に注目されるのは、ウェットフードへのシフトだ。Me-OやDroolsなどのブランドが急速に人気を高めており、より自然に近い形でのペット栄養供給が求められている。さらに、タンパク質豊富で穀物不使用、機能性フードなど、ペット個別のニーズに合わせた食事の需要が拡大している。 ペット関連サービスも劇的に多様化している。ペットテクノロジーとしてGPSトラッカーやスマート給餌器が普及し始め、ペット用のサブスクリプションボックスサービスも人気を集めている。さらに健康志向の飼い主たちの間では、CBD配合やアーユルヴェーダ由来のサプリメントなど、有機的で自然派のウェルネス製品への関心が高まっている。これらはペット医療と健康管理を同じくらい重視する動きを示唆している。 インドのペット産業市場規模は2024年で約3.6億ドルに達し、2028年までに倍増すると予測されている。今後10年間は年19%の成長が見込まれており、業界内ではユニコーン企業(評価額10億ドルの非上場企業)の誕生も期待されている。Amazonやフリップカート、Heads Up For Tails、Supertailsといったオンラインプラットフォームが急速に市場を侵食しており、デジタル化もこの産業成長を加速させている。 ペット飼育がステータスシンボルから家族関係の深化へとシフトする中で、インド社会全体でペットに対する認識が大きく変わろうとしている。このトレンドは単なる消費増加ではなく、都市生活者たちのライフスタイルと心理の変化を反映した、より深い社会変動といえるだろう。