欧州南部の経済回復が進む中、イタリアの労働市場に興味深い矛盾が生まれています。イタリアの統計局Istatが発表した5月のデータによると、失業率は5%に低下し、記録的な水準に達しました。この数値は経済協力開発機構(OECD)の平均値(4.9%)と並ぶレベルで、同国の労働市場の改善を示す指標として注目されています。 月次ベースでは雇用が2万2000人減少するなど、短期的には揺らぎが見られます。ただし過去1年間で比較すると、失業者は39万9000人減少し、失業率は1.5ポイント低下しました。特に女性と若年層(15~24歳)、そして50歳以上の層で失業者が減少しており、広い年齢層で雇用環境が整っていることがわかります。 しかし同時に、深刻な課題も浮き彫りになっています。イタリアの実質賃金は第1四半期(2026年)で前年同期比1.3%の成長を見せたものの、2021年第1四半期との比較では依然として6.1%低い水準に留まっています。これはOECD主要国の中で最大の下落幅です。 イタリア政府は2026年の予算案で、雇用と生活水準の向上に向けた施策を導入しています。年収2万8000~5万ユーロの層の所得税率を35%から33%に引き下げることで、低・中堅層の手取りを増やす方針です。また残業代やシフト勤務による追加給与(年1500ユーロまで)に対して、15%の一律税を適用する優遇措置も設けられました。 一方、欧州委員会の予測では、2026~27年の失業率はさらに5.7%に低下する見込みです。ただし実質賃金の成長は鈍化する一方で、エネルギー価格の上昇が再び物価上昇をもたらす可能性があり、家計の購買力がどこまで回復するかが課題として残されています。